「年金だけだから確定申告はいらない」は本当か?
年金生活を送る中で、「確定申告ってもう関係ないのでは?」と感じる方は少なくありません。現役時代には毎年のように行っていた確定申告も、退職後は必要がないと思い込んでしまうことがあるからです。しかし、実際には年金受給者であっても確定申告が必要なケースは数多く存在します。
特に、公的年金以外にも所得がある場合、あるいは医療費控除やふるさと納税などを活用したい場合は、自ら申告しなければ還付も受けられません。また、「税理士に頼むのは費用がかかる」「できれば自分で済ませたい」と考える方にとって、申告手続きは心理的にも高いハードルとなります。
そこで本記事では、年金収入のある方に向けて、「確定申告が必要な人」「申告不要な人」の見分け方から、
実際の手続き方法までをわかりやすく解説します。初めての方でも自力で進められるように、具体的なポイントや準備すべき書類、注意点についても丁寧に取り上げます。
「確定申告が必要な年金受給者」と「不要な人」の違いとは?
年金受給者の確定申告義務については、多くの誤解が存在します。たとえば、「年金は非課税だから申告しなくていい」と思い込んでいる方がいますが、それは正確ではありません。年金にも課税対象となる部分があり、金額やその他の収入によっては申告が必要になるのです。
次のような条件に該当する方は、確定申告をしなければならない可能性があります。
- 公的年金の年間収入が400万円を超える
- 公的年金以外に、事業所得や不動産収入、配当、アルバイト収入などがある
- 年金からすでに源泉徴収されている税金の還付を受けたい
- 医療費控除や寄附金控除などの各種控除を適用したい
- 配偶者や家族を扶養に入れて控除を受けたい
これらに該当する場合、申告しなければ本来戻ってくるはずの税金が戻ってこなかったり、後日追徴課税を受けるリスクもあります。一方で、年金収入のみで一定額以下(例えば65歳以上で年金額が年158万円以下)の場合は、確定申告が不要になることもあります。
そのため、「自分は申告が必要なのかどうか?」をまず明確にすることが、手続きを始めるうえでの第一の関門となります。
なぜ年金受給者にとって確定申告は難しく感じられるのか?
確定申告が難しいと感じる理由には、いくつかの要因があります。
まず、年金収入に関する情報が非常に複雑であるという点です。例えば、「公的年金」と「企業年金」では課税方法が異なりますし、控除の対象も細かく分かれています。また、税務署からのお知らせや書類も専門用語が多く、「何をどのように入力すればいいのか」が分かりづらくなっています。
次に、申告に必要な情報があちこちに散らばっているという実務的な問題もあります。源泉徴収票、支払調書、控除証明書、マイナンバーカードなど、必要書類の数が多く、特に高齢の方やパソコン操作に慣れていない方にとっては、事前準備の時点で挫折してしまうことが多いのです。
さらに、電子申告(e-Tax)への対応が進んでいる一方で、操作環境の整備(ICカードリーダーの準備やマイナポータル連携など)が十分にできていないと、手続きが進まず、結局窓口での提出を選ばざるを得ないという現実もあります。
このように、申告の必要性を正しく理解すること、情報を整理すること、そして適切な方法で手続きを行うこと。これらのすべてがスムーズに連携しないと、確定申告は「面倒でよく分からないもの」になってしまいます。
自分でできる確定申告の準備と進め方
年金受給者が確定申告を自力で行うためには、以下の3つの視点を整理することが重要です。
自分の所得状況を正確に把握する
まずは前年の所得を整理しましょう。公的年金等の「源泉徴収票」(年金機構から1月頃に送付)を基に、年間の収入金額と源泉徴収額を確認します。ほかにも副収入があれば、合算して「所得金額の合計」を算出する必要があります。
控除できるものを見落とさない
医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、配偶者控除、基礎控除など、適用可能な控除はすべてリストアップしておきます。特に医療費控除については、領収書や医療費通知(健康保険組合から届く年間の医療費一覧)を保管しておくと便利です。
申告方法を選択する
申告方法には「書面提出」と「電子申告(e-Tax)」があります。e-Taxはマイナンバーカードやパソコン・スマートフォンが必要ですが、控除が多い人は還付が早いという利点があります。書面提出の場合は、申告書を国税庁HPから印刷し、税務署に郵送または持参します。
事前準備から提出までの流れ
ここでは、申告までのステップを具体的に解説します。
必要書類の準備
・年金の源泉徴収票(1月下旬に送付)
・医療費控除や保険料控除の証明書
・マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類
・銀行口座情報(還付がある場合)
申告書類の作成
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、質問形式で入力を進められるため初心者にも適しています。用意した書類の金額を入力していくことで、還付額や納税額が自動で計算されます。
※リンクは令和6年分です。令和7年分は1月上旬掲載予定のようです。
申告方法の選択と提出
e-Taxを選ぶ場合は、マイナポータルと連携して申告書がオンライン提出できます。書面提出の場合は、印刷した書類に押印・署名のうえ、最寄りの税務署へ郵送または持参します。
控除の反映と還付確認
申告内容に問題がなければ、申告から1か月程度で還付金が指定口座に振り込まれます。還付がない場合でも、控除内容が正しく反映されているか後日確認通知が届きます。
年金受給者の確定申告は「仕組み」を知れば自分でもできる
確定申告は、年金収入しかない人にとっても無縁ではありません。むしろ、正しく理解すれば「還付が受けられる」「将来の控除につながる」といったメリットも多く、自分の収支を見直すきっかけにもなります。
最初のハードルは「必要かどうかの判断」、次に「準備すべき書類の把握」、そして「申告書作成と提出」の3ステップです。この流れを把握するだけでも、申告への抵抗感は大きく和らぎます。
現在は国税庁のオンラインサービスも進化しており、パソコンやスマートフォンを使えば、自宅にいながら申告を完了させることも可能です。わからない箇所があれば、税務署の窓口や電話相談も活用できます。
大切なのは、「誰かに頼らないとできない」と思い込まず、自分の状況に合ったやり方を選ぶことです。一度経験すれば、次年度以降の手続きもぐっと楽になるはずです。
確定申告は「税金のための面倒な作業」ではなく、「自分のお金を守るための大事なステップ」でもあります。年金受給者の方こそ、賢く、そして安心して手続きを進めていきましょう。



