将来の起業に向けて、いまからやるべきことは?

会社設立

起業を考え始めたら、最初にやるべきことは「ビジネスアイデアを具体化し、事業計画として形にすること」です。その上で、税務・会計の基礎を押さえ、資金繰りや公的制度の情報収集を始めることが、成功への第一歩になります。

「まだ何をやるか決まっていない」「手続きもお金も分からない」と不安を抱えている方も多いでしょう。ですが、開業届を出す前にできることは数多くあります。実は、起業の成功は準備の質と量に大きく左右されるのです。

本記事では、これから起業を目指す個人の方が、いまから具体的に取り組むべきステップを体系的にご紹介します。事業構想の作り方から、資金計画、税務・会計の基本、さらには公的支援の活用まで、幅広くかつ実践的に解説します。

起業は「決意」ではなく「準備」から始まる

起業というと、多くの人が「開業届を出した瞬間に起業家になる」と考えがちですが、実際にはそれよりはるか前から起業家としてのプロセスは始まっています。重要なのは、「いつかやる」ではなく、「いまからできることを始める」ことです。そうすることで、起業という大きな節目を、自信と計画性をもって迎えることができます。

ここで重要なのは、何か特別な才能や知識を持っていなくても、着実に準備を重ねれば誰でも起業に近づけるということです。むしろ、時間をかけて事前準備を行った人ほど起業後のトラブルが少なく、成功率も高いという調査結果もあります。

事業アイデアを「構想」から「構造」へ落とし込む

起業を志す際に最も最初のステップとなるのが、「どのようなビジネスをやるのか」を考えることです。しかし、単に「カフェをやりたい」「ネットショップを作りたい」といった思いつきの段階では、まだ現実的な事業とは言えません。

ここでは、事業構想をより具体的にするために、「ビジネスモデルキャンバス」や「SWOT分析」などのフレームワークを活用することが有効です。例えば、SWOT分析では自分の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を整理することで、今後の戦略の方向性が明確になります。

また、事業計画書の作成は単なる形式的な作業ではなく、自分のアイデアが本当に市場に通用するのか、どの程度の利益が見込めるのか、実現のために何が必要かを客観視する大きな機会となります。ビジネスプランは、自己理解と市場理解をつなぐ「橋」の役割を果たします。

税務と会計の基礎は早めに身につける

起業において、税務と会計の知識は「専門家に任せればよい」と考える人も多いですが、最低限の基礎は事前に学んでおくべきです。特に個人事業主として開業する場合、開業届や青色申告の届出、帳簿作成義務など、起業初期から対応すべき税務手続きが発生します。

青色申告のメリットは非常に大きく、正規の帳簿を作成することで最大65万円の所得控除が受けられます。また、赤字を翌年以降に繰り越せるなど、開業初年度にありがちな損失をカバーする制度も整っています。

さらに、近年は「電子帳簿保存法」の改正により、領収書や請求書のデジタル保存に関する要件も厳しくなっています。開業前にこうした制度を理解しておくことで、起業後のトラブルを避け、効率的に業務を進めることが可能となります。

資金繰りのシミュレーションを始める

起業でつまずく大きな要因の一つが「資金繰り」です。起業当初は思うように売上が上がらないことも多く、毎月の支払いや運転資金をどう確保するかが非常に重要になります。逆に、事業が順調に伸び始めたタイミングでも、仕入れや設備投資が先行し、手元の現金が枯渇してしまうリスクもあります。

したがって、事業を始める前から、毎月のキャッシュフロー(収支の流れ)をシミュレーションしておくことが不可欠です。たとえば、仮に月の固定費が30万円であれば、3か月分=90万円の運転資金が最低限必要です。そこに開業費(設備投資やホームページ作成費など)を加えると、100万円〜300万円程度の資金が必要になる場合もあります。

この資金をどのように用意するのか、自己資金だけで足りるのか、公的な融資や補助金を活用するか、といった計画を早い段階で立てておくことが大切です。

日本政策金融公庫などの融資制度を理解する

創業時の資金調達手段として最も多く利用されているのが、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」です。この制度は、自己資金が不足していても利用できる柔軟性があり、無担保・無保証で数百万円の融資を受けることも可能です。

ただし、申請には事業計画書の提出が必要であり、資金使途や返済計画について明確に説明できる必要があります。また、創業支援認定を受けた自治体や商工会を通じた紹介があると、審査がスムーズになる場合もあります。

他にも、厚生労働省や中小企業庁が提供する補助金・助成金制度も存在しますが、それぞれ公募期間が限定されているため、定期的な情報チェックが欠かせません。

起業に必要な手続きを事前にリストアップ

開業を目指す方にとって、行政手続きの流れを把握しておくことも非常に重要です。以下は、個人事業主として開業する際の基本的な流れです。

  • 税務署に開業届を提出(事業開始後1か月以内)
  • 青色申告承認申請書の提出(提出期限:青色申告したい年の3月15日まで)
  • 事業専用の銀行口座を開設
  • 会計ソフトの選定・導入
  • 必要に応じて各種許認可の取得(飲食業、理美容業、建設業など)

法人設立の場合はさらに、登記申請、公証人による定款認証、資本金の払込、社会保険・労働保険の手続きが追加されます。こうした手続きには専門家の助けが必要なこともあるため、早めに税理士や行政書士との連携体制を検討しておくとよいでしょう。

人脈形成と専門家へのアクセスを意識する

起業は「孤独な作業」と捉えられがちですが、実際には多くの人の支えがあってこそ成り立つものです。準備段階から「相談できる人」を確保しておくことで、不安や迷いに対する精神的な支えにもなります。

商工会議所、創業支援センター、地域の金融機関などは、起業希望者向けのセミナーやマッチングイベントを開催しています。また、オンラインでも起業家同士のコミュニティやSNSグループが存在し、情報交換の場として有効です。

専門家への相談も積極的に行いましょう。税理士、中小企業診断士、社会保険労務士など、それぞれの分野に詳しいプロフェッショナルに話を聞くことで、リスク回避や効率化が可能になります。最近では、創業支援特化の税理士事務所や無料オンライン相談を提供している公的機関も増えています。

実践的なアドバイス

今日からでもできる起業準備の行動をいくつかご紹介します。

起業ノートを作る

紙のノートやデジタルメモでも構いません。「やりたいこと」「思いついたビジネスアイデア」「調べた情報」「かかるお金の試算」などを、継続的に記録していくことで、起業に必要な知識が整理されていきます。

無料セミナーや相談会に参加する

商工会や地方自治体が実施している起業支援セミナーや無料相談会は、初心者向けの内容が多く、第一歩として最適です。実際に起業した人の体験談を聞ける場もあり、現実味を感じながら準備を進められます。

会計ソフトを試してみる

freeeやマネーフォワードなど、初心者でも使いやすいクラウド会計ソフトがあります。無料プランで使い方を試しながら、事業用の口座やカードと連携することで、お金の流れの管理を練習できます。

専門家とつながる

将来的に税理士や社労士の力が必要になる可能性を考慮し、今のうちから相談先を見つけておくと安心です。地域の紹介制度や創業者向け税理士ネットワークなどを活用し、相性の良い専門家を探しておきましょう。