「売上は伸びているはずなのに、手元に資金が残らない」「節税したいが、何をどうすれば良いか分からない」「融資の申請をしたが希望通りに通らなかった」「事業計画は立てたものの、実行に落とし込めていない」――こうした声は、中小企業や個人事業主の経営者の間で日常的に聞かれるものです。
経営者としての役割は多岐にわたります。本業の品質やサービスの向上はもちろん、従業員のマネジメントや顧客対応、仕入先との交渉など、日々の業務に追われる中で、節税や資金調達、将来を見据えた事業計画の見直しまで自らが主導して進めなければなりません。これらの課題に取り組む余裕がないまま、税金の支払いに追われ、金融機関との関係構築も曖昧なままになってしまうと、気づいたときには資金繰りが厳しくなっているというケースも珍しくありません。
さらに、事業計画の立案は一度きりで終わるものではありません。市場環境の変化、原材料費の高騰、労働力の確保といった外的要因に迅速に対応するには、柔軟に修正しながら運用していく「生きた事業計画」が必要です。そのためには、常に正確な会計情報と経営判断を支える「数字」が必要不可欠です。
本コラムでは、こうした悩みを抱える経営者に向けて、節税・融資・事業計画見直しに関する課題の背景と原因を分析し、実務的な改善策とその導入ステップを解説していきます。経営の質を一段上に引き上げたい方にとって、具体的な第一歩となる情報をお届けします。
経営の中核に潜む3つの盲点
経営の中核に潜む3つの盲点の内容から導き出される、経営者が特に注目すべき6つのポイントを整理しました。
6つのポイント
・節税は“知識不足”ではなく“準備不足”が原因
・融資申請に必要なのは“資料の体裁”ではなく“説明力”
・事業計画は“作成”より“運用”が本質
・会計データの未活用が全てのボトルネック
・税、融、資経営計画は“別問題”ではなく“一体化”して考えるべき
・専門家との“対話不足”が改善の足かせに
節税に関する問題
多くの経営者は「とにかく税金を減らしたい」と考えていますが、制度や控除の仕組みが複雑であるため、結果的に何も手を打たずに決算を迎えてしまうケースが少なくありません。税金は後からまとめて払うものという意識が根強く、日頃の経費計上や帳簿処理の見直しが疎かになることで、本来なら適用可能な節税措置を見落としてしまうリスクが生じます。
融資の問題
新たな設備投資、運転資金の確保、あるいは一時的な資金ショートの補填など、融資の目的は多岐にわたります。しかし、「とりあえず借りたい」といった姿勢では金融機関の理解を得るのは難しく、審査が通らないか、厳しい条件を提示されることになりがちです。特に創業間もない企業や、会計資料の整備が不十分な場合は、資金調達のハードルが一気に高くなります。
事業計画の運用
「とりあえず作っただけ」で棚に置かれたままの計画書や、過去の数字に基づいた現実性の乏しい予測では、現場の改善にはつながりません。事業計画は経営の指針であると同時に、外部への説明責任を果たす重要なツールでもあります。社員、投資家、金融機関など、多くのステークホルダーに対して信頼性のある将来像を示すには、具体的な根拠に基づいた計画であることが求められます。
これらの課題は、表面的には別々の問題に見えますが、根底にあるのは「会計と経営の分離」つまり「経営判断に活用できる数字を持たない」ことにあります。数字を経営に活かす体制が整っていないために、個々の対応が後手に回り、結果として経営全体の質が低下してしまうのです。
なぜ、経営者は数字に弱いのか
「数字が苦手」「会計は専門家に任せているから自分は関与しない」という経営者の声は少なくありません。しかし、経営において数字は単なる記録ではなく、判断や戦略の根拠となる“経営言語”です。数字を読めないということは、企業の健康状態を把握せずに走り続けているようなものであり、非常にリスクの高い状態と言えます。
では、なぜ多くの経営者は数字に対して苦手意識を持ち、実際に数字を経営に活かせていないのでしょうか。その背景には、日々の忙しさや体制の不備だけでなく、経理情報の扱い方や学び方に関する構造的な問題が潜んでいます。
会計情報の整理が追いついていない
多くの中小企業や個人事業主では、日々の売上や仕入、経費の記録が後回しになっており、帳簿が常に“過去の記録”にとどまっている状態です。そのため、資金の流れがブラックボックス化し、キャッシュフローの把握が困難になっています。
税務や融資に関する知識が断片的である
インターネットやSNSで得た知識や、知人からのアドバイスを鵜呑みにしてしまい、制度の適用条件を誤って理解するケースも見受けられます。正確な理解がないままに申告や融資申請を進めると、税務調査や融資否決という形で大きなリスクが生じます。
事業計画を定期的に見直す体制がない
計画は一度作って終わりではなく、外部環境の変化や業績の推移に応じて柔軟に修正されるべきです。しかし、定期的な振り返りの場が設けられていない経営体制では、過去の経験や勘に頼った経営が常態化し、将来を見据えた判断が難しくなります。
これらの原因は、経営者一人で全てをカバーしようとする負担の大きさにも起因します。だからこそ、会計や税務の専門家と連携し、経営判断に活かせる数字の整備と活用を実現する体制が求められるのです。
3つの分野を連携させる「見える化」経営
3つの分野を連携させる『見える化』経営」の内容から、経営改善の要となるポイントを以下のように整理できます。
経営改善の要となるポイント
・節税の見える化:制度と支出の“見える整備”
・融資戦略の見える化:金融機関が“納得”する資料とストーリー
・事業計画の見える化:“絵に描いた餅”を“実行可能な戦略”へ
こうした状況を脱するために必要なのは、3つの分野を連携させて“見える化”することです。数字を可視化し、経営判断に活かす体制を整えることで、経営の質を大きく向上させることが可能となります。
連携させる「見える化」経営
第一に、「節税」の見える化。会計データを基に、どの費用が損金算入できるのか、どの制度が利用できるのかを洗い出し、事前に対策を打てる体制を構築します。たとえば、交際費の限度額、少額減価償却資産の取り扱い、福利厚生費の正しい区分など、日常的な取引にも見直すべき点は多く存在します。(この項目の詳細な節税方法については税理士にご確認ください)
第二に、「融資戦略」の見える化。金融機関が重視するのは、返済能力と計画の現実性です。売上推移や資金繰り表を整え、事業の将来像を数値で説明できる準備が不可欠です。金融機関との面談では、事業の強み、収益モデル、改善点を明確に説明することが信頼につながり、融資条件の交渉力にも直結します。
第三に、「事業計画」の見える化。実行可能なアクションプランと、それに連動する予算、収益目標、KPIを設計し、毎月チェックできる運用体制に落とし込むことが求められます。さらに、実績との比較を通じて計画の妥当性を検証し、必要に応じて迅速に修正する仕組みを構築することが重要です。
現場で使える改善アクション
改善の第一歩は、過去12ヶ月の損益と資金繰りの棚卸しです。会計ソフトやExcelなどを使い、売上・原価・経費・利益の推移をグラフ化して見える形にします。これにより、季節変動や特定費用の増減傾向が一目で分かるようになります。
次に、節税の基本項目をリスト化します。家事按分、青色申告特別控除、減価償却、少額減価償却資産の特例、福利厚生費の計上など、(各項目の適用条件や金額については税理士の確認が必要です) 日常の支出がどのように経費化できるかを明確にすることで、節税に対する意識が変わります。
融資については、資金用途を明確にした上で、事業計画書、資金繰り表、売上実績表など、金融機関が求める資料を揃える必要があります。金融機関ごとの審査基準やポイントを押さえ、専門家のチェックを受けながら準備することで、信頼性が増し、交渉の余地も広がります。
事業計画は、3ヶ月スパンでのアクションプランとそのKPIを設定し、毎月振り返る体制を設けます。理想は経営者一人で抱えず、外部の専門家や顧問税理士と連携しながら、計画と現場を一致させていくことです。社員への共有も含めて、現場との一体感を生むことが成功の鍵となります。
数字は経営者の羅針盤
節税・融資・事業計画、それぞれの対策に取り組むことはもちろん重要ですが、もっと大切なのはそれらを「数字」でつなぎ、経営全体の羅針盤として活用する視点です。会計情報は単なる記録ではなく、未来を予測し、現場を導くための最も信頼できるツールです。
経営に必要な情報は、すでにあなたの手元にある会計データの中に眠っています。そのデータを活かし、経営判断の質を一段高めることで、資金繰りの改善、税負担の適正化、そして計画の実現性が格段に上がります。売上を上げるための努力も大切ですが、それと同じくらい「守り」としての会計整備も欠かせません。
もし、「自分一人では手が回らない」「どこから手をつけていいか分からない」と感じているなら、今こそ専門家との連携を検討するタイミングです。無料相談や経理代行、事業計画の策定支援などを活用し、確かな一歩を踏み出してみてください。税理士や中小企業診断士などの専門家が、あなたの経営の伴走者として強力な支援を提供してくれます。
経営は、仕組みと数字で強くなる。その第一歩を、今、踏み出しましょう。
税理士法人YMG林会計では、無料相談も提供しております。税理士の切り替えに不安がある方も、まずはお気軽にご相談ください。あなたの経営を、より力強くサポートするパートナー選びの一助となれば幸いです。




