日々の業務に追われながら、なんとか作成・提出している決算書。しかし、それを「見るだけ」「提出するだけ」で終えていませんか?
経理担当者や税理士から「今年もこのくらいの利益でしたね」と簡単な説明を受けて終わってしまう
――そんな状況が続いているなら、非常にもったいない状態です。
決算書は、会社の過去を記録するだけのものではありません。適切に読み解くことで、資金繰り、利益の質、将来の投資判断、さらには経営の根本的な戦略に至るまで極めて重要なヒントを与えてくれる「未来をつくるための資料」です。
本コラムでは、決算書を経営に活かしきれていない経営者・個人事業主の方々に向けて、「決算書の本当の使い方」について、解説します。
決算書を活かしきれていない現実
多くの中小企業経営者や個人事業主が、決算書を「提出のための資料」「税額を知るためのもの」としか捉えていません。
数字が並んでいる書類を前にしても、「税理士に任せているからよく分からない」「自分では読み取れない」と感じ、実際に経営判断に活かすところまでは至らないのが実情です。
しかし、資金繰りに苦労したり、価格交渉で収益構造の説明に困ったり、あるいは融資の申請時に銀行担当者から厳しい質問を受けた経験があるなら、それはまさに“決算書を読めていないこと”による経営リスクと言えます。
なぜ、決算書を「読めない」のか?
1.構造や用語が専門的
損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CF)など、それぞれの役割やつながりを体系的に理解しないまま、「部分的な数字」だけを見ているケースがほとんどです。
2.税理士との関係性
税理士との関係性が「申告のための委託」にとどまっており、経営の分析・アドバイスを得る場になっていないことも原因のひとつです。数字の背景にある実態や課題を共有しないまま、過去の数字だけが報告される。そのような“作業的な決算”が繰り返されています。
3.決算書の活かし方
そもそも「決算書をどう活かすか」という視点を持っていないケースもあります。つまり、決算書を「読む」目的が、税金の確認や利益の把握にとどまり、「未来のための経営資料」としての意識が欠如しているのです。
決算書から見える“未来”のヒント
決算書は、経営の“成績表”であると同時に、経営の“診断書”でもあります。以下のような視点で読み解くことで、将来の経営判断に直結する情報を得ることができます。
PL(損益計算書)
単に利益の額を見るだけでなく、「粗利益率」「営業利益率」などの収益性を確認することで、価格設定やコスト構造の課題が見えてきます。売上は伸びているのに利益が出ていない場合、原価率が上がっているのか、販管費が増えているのかを突き止めることが重要です。
BS(貸借対照表)
資産と負債のバランス、つまり財務体質を把握できます。自己資本比率が低い場合、外部からの資金に過度に依存している可能性があり、資金繰りに注意が必要です。棚卸資産や売掛金の増減から、在庫管理や回収状況の問題点も把握できます。
CF(キャッシュフロー計算書)
実際に使える現金の流れが明確になります。黒字倒産を避けるためにも、利益が出ている=資金がある、という誤解を正す必要があります。
決算書を経営判断に活かすための実践法
まずは、決算書の各項目が何を意味しているかを理解することが出発点です。難解な用語も、視覚的に図解された資料や、実際の自社の数値をもとに説明を受けることで、格段に理解しやすくなります。ここで信頼できる会計事務所や税理士のサポートが不可欠です。
次に、自社のKPI(重要業績評価指標)と照らし合わせて、経営上のどの数値に注目すべきかを整理します。たとえば飲食業であればFL比率(FoodとLaborの合計比率)、製造業であれば原価率や在庫回転率など、業種によって重視すべき指標は異なります。
また、決算書は1期分だけを見ても断片的です。過去3年分程度を並べて傾向を分析することで、成長率・収益性・財務の健全性が浮き彫りになります。さらに、他社比較や業界平均との照合を通じて、自社の立ち位置を客観視することも可能になります。
決算書を経営に活かすための導入ステップ
実際に決算書を「未来の道標」として活用するためには、次のようなステップを踏むことが効果的です。
数字は経営の「言語」である
決算書は、単なる過去の記録ではなく、経営の未来を切り拓くための“言語”です。読み方を習得し、実践に落とし込むことで、見えてくる世界は大きく変わります。資金繰りの改善、利益率の向上、融資交渉の成功、新規投資の判断――これらすべてに、決算書の活用が不可欠です。
「数字に強い経営者になる」ということは、単に会計を学ぶことではなく、自社の未来に責任を持つという姿勢の表れでもあります。
ぜひ今期から、決算書を「読む」から「活かす」へと進化させてください。もし読み解きに不安があるなら、税理士に相談し、経営分析の視点を共有することを強くおすすめします。それが、これからの経営をより確かなものにする第一歩です。


