「ここ数年、売上は伸びているはずなのに、なぜか手元にお金が残らない」
「資金繰りが毎月ギリギリで精神的に余裕がない」
「急な支出に耐えられる体力がない」――。
これは、多くの中小企業経営者や個人事業主が直面している共通の悩みです。事業を軌道に乗せることに成功しても、財務の健全性が保たれていなければ、持続可能な成長は望めません。
本コラムでは、会社の財務体質をチェックし、経営の健康状態を可視化するための「会社の健康診断チェックリスト」をご紹介します。
これを通じて、見落とされがちな経営課題を明らかにし、持続的成長への第一歩を踏み出していただくことが本稿の目的です。
会社経営に潜む「見えない不健康」
会社の健康診断という言葉にピンとこない方もいるかもしれません。しかし、私たちが年に一度の健康診断で病気の兆候を見逃さないように、企業も定期的に「財務の診断」を行わなければ、気付かぬうちに経営不全に陥ってしまいます。
たとえば、赤字ではないのに資金繰りが苦しい、売上は安定しているのに利益が出ない、借入依存が高まっているなど、表面的には順調に見えても内部で問題が進行していることは少なくありません。過去のデータに安心してしまい、現在の数値を分析しないまま経営判断を行ってしまうことも大きなリスクです。
このような「見えない不健康」の兆候を放置してしまうと、徐々に経営のバランスが崩れ、突発的な支出や外部環境の変化に対応できず、最悪の場合、資金ショートにより事業継続が困難になる事態に陥りかねません。つまり、財務の健全性は、企業の持続可能性そのものに直結する極めて重要な要素なのです。
なぜ財務状況が把握できないのか
財務の見通しが立たない最大の原因は、経営者自身が財務データを読み解けていない、あるいは活用できていないことにあります。多忙な日常業務に追われ、財務を後回しにしてしまうことはよくありますが、その結果として意思決定に必要な情報が不足し、非効率な経営を続けてしまうのです。
多くの中小企業や個人事業で見受けられるケース
- 月次の損益計算書を確認していない、または読み方がわからない
- 売掛金や買掛金の管理が曖昧で、実際のキャッシュフローが把握できていない
- 原価計算や部門別の収益性分析がなされていないため、どの商品やサービスが利益を生み出しているのかが不明確
- 節税対策や借入の適正判断が勘に頼っている、または信頼できるアドバイザーがいない
これらはすべて「数値に基づいた経営判断ができていない」ことを意味します。会計帳簿はただの義務ではなく、経営の羅針盤となるツールです。情報があっても、それを整理・分析し、経営に活かせなければ、数字は単なる記録にすぎません。
財務チェックリストで見える化する
経営の健全性を保つためには、まず財務状況を定期的に「見える化」することが必要です。自社の財務体質を把握するためには、専門家の助言も得ながら、具体的な指標をもとに評価していくことが効果的です。
以下に紹介するチェックリストを活用することで、自社の現在地を客観的に評価し、改善すべき点が明確になります。特に経営者が一人で事業を回しているケースでは、こうした指標を定期的に確認することで、不安の種を早期に発見し、予防的に対処することが可能になります。
【財務健康診断チェックリスト】
- 売上と利益の推移を3期比較しているか?
- 売上総利益率(粗利率)の変動を把握しているか?
- 売掛金・買掛金の回収・支払サイトを管理しているか?
- キャッシュフロー計算書を定期的に確認しているか?
- 借入金の返済計画を含めた資金繰り表を作成しているか?
- 固定費と変動費を分類し、損益分岐点を把握しているか?
- 部門別または製品別に利益を分析しているか?
- 自己資本比率や流動比率などの財務指標を定期的にチェックしているか?
- 節税対策の実施状況とその効果を把握しているか?(※要税理士確認)
- 決算内容を税理士から十分に説明を受け、理解しているか?
すべて「はい」と答えられる企業は、財務面での健康状態は良好といえます。しかし、いくつか「いいえ」があれば、それは改善の余地がある重要なサインです。これを機に、自社の財務状況について再確認してみてください。
行動を促す結論と相談のすすめ
会社の健康状態を定期的に確認することは、経営の安定と成長に不可欠なプロセスです。財務状況を可視化することで、課題が明確になり、適切な打ち手が見えてきます。逆に言えば、財務を曖昧にしたままでは、どんなに素晴らしいビジョンを描いても実現の可能性は低くなってしまいます。
本コラムで紹介したチェックリストを活用し、自社の財務状況を「見える化」することで、日々の意思決定がより戦略的で確実なものになるでしょう。
しかし、すべてを自社だけで行うのは現実的に難しい場合もあります。その際は、信頼できる税理士や経営支援の専門家に相談し、第三者の視点を取り入れることで、より健全な経営体制を築くことができます。
※節税に関する対策や判断は、必ず税理士にご確認ください。
経営の健全化は、未来への投資です。短期的な視点ではなく、中長期的な視野で財務を見つめ直すことが、持続的な成長への鍵となります。今こそ、自社の財務を見直す第一歩を踏み出してみませんか。


