経理初心者がやりがちな失敗と、その回避策

経営コーチ

初心者が最初の1年で必ず直面する失敗ご存知ですか?領収書の紛失、仕訳ミス、申告期限の見落とし—これらは年間数十万円の損失につながる可能性があります。事業を始めて間もない個人事業主や中小企業の経営者にとって、経理業務は避けて通れない壁である一方、正しい知識があれば「経営の武器」に変えることができます。

本コラムでは、経理初心者が実際に陥りがちな失敗を具体的に紹介し、それらを未然に防ぐための実務的な解決策を提案します。正しい知識と適切な体制を整えることで、経理業務は「負担」から「経営の武器」へと変わります。日々の業務のなかで自然と身につく形で、経理リテラシーを高めるための実践的な情報をお届けします

経理初心者が抱える根本的な課題

経理に関する失敗が多発する背景には、いくつかの共通した課題があります。まず一つは、経理の専門性に対する理解不足です。「会計ソフトを使えば何とかなる」「レシートを取っておけば安心」といった誤解のもと、根本的な仕組みを理解しないまま処理を進めてしまうことが多く見られます
また、日常業務に追われて経理業務が後回しになりがちであることも要因です。特に一人で事業を切り盛りしている事業主にとっては、毎日の売上管理や請求書発行、領収書整理まで手が回らず、月末や決算期に慌てて処理するケースが少なくありません。経理は「急がないけれど重要な業務」であるがゆえに、後回しにされがちです。
さらに、法制度や税制の変更に対応しきれないことも、ミスを引き起こす原因の一つです。特にインボイス制度や電子帳簿保存法など、最近の制度改正は事業者に新たな対応を求めていますが、その内容を正しく把握しきれていないケースが多く見られます。こうした制度変更に追随できなければ、取引先との関係悪化や、思わぬペナルティのリスクもあります。
そして、人的リソースの不足も深刻な課題は以下の通りです。

・経理を専門に担当するスタッフを確保
・経営者や総務担当者が兼務しているのが実情
・業務の属人化が進むと、引継ぎが不十分
・担当者の退職や休職によって業務が滞る可能性

さらに問題なのは、業務の属人化が進行する点です。経理処理のやり方が一部の担当者の頭の中にしか存在しない状態になると、引き継ぎが困難になり、その担当者が急な退職や長期休暇に入った場合、業務が完全に止まってしまうリスクが高まります。これにより、請求漏れ支払遅延申告期限の遅れといったトラブルが発生する恐れがあるのです。
また、属人化が進んでいる組織では、ミスが発見されにくくなります。チェック機能が働かないために、重大な誤りや不正が長期間放置されることもあり、場合によっては法的リスクに発展する可能性すらあります。たとえば、誤って税務申告を過少にしてしまった結果、後に追徴課税や加算税が課せられるケースなどが挙げられます
人的リソースの不足を放置すれば、経理業務そのものの継続性が損なわれるだけでなく、企業の信用や資金繰り、さらには存続にも関わる重大な問題に発展しかねません。したがって、早期に体制の見直しと再構築を図ることが求められます。

初心者が実際に陥る失敗例

経理初心者の方がやりがちな失敗には、以下のようなものがあります。これらの失敗は、単なる処理ミスにとどまらず、経営全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。

領収書の紛失や保存ミス

最も多く見られるトラブルです。必要な経費が計上できなくなれば、納税額が本来よりも多くなってしまう可能性があり、結果として資金繰りを圧迫します。特に、税務調査で証拠資料が提示できない場合、経費が否認されるリスクがあります。また、取引先との関係性においても、適切な帳簿管理が信用の裏付けとなるため、信頼性を損なうことにもなりかねません。
対処法:紙媒体の管理に依存することが主な原因です。領収書を受け取った段階で、スマートフォンで撮影してクラウド上に保管する習慣をつけることが有効です。日付や用途をファイル名に含めることで、後からの検索も容易になります。また、経費精算アプリやクラウド会計ソフトの証憑アップロード機能を利用すれば、電子帳簿保存法にも対応しやすくなります。紙の原本は処理済・未処理に分けてファイリングし、月末にはチェックリストで漏れがないか確認するとよいでしょう。

仕訳の誤りも頻発するミス

勘定科目の選択を誤ることで、決算書の内容に歪みが生じ、税務申告時に修正申告が必要になる場合もあります。例えば、交際費と福利厚生費の違いを理解せずに処理してしまうと、損金算入の可否に影響を及ぼすことがあります。また、個人の支出を事業経費として誤って計上してしまうと、税務上の問題に発展する可能性があります。
対処法:「勘定科目の使用ルール」を社内で明文化し、特に曖昧になりやすい費用区分(交際費・会議費など)については具体例を共有することが重要です。会計ソフトの自動仕訳機能やテンプレートを活用することで、処理の一貫性を保つこともできます。加えて、定期的に代表的な仕訳を専門家に確認してもらい、誤りを早期に発見できる体制を整えると安心です。

減価償却の誤認や未処理ミス

高額な設備や車両などは一括で経費にできず、耐用年数に応じて計上する必要がありますが、この仕組みを理解せずに処理してしまうと、決算書の正確性が失われるだけでなく、税務署からの指摘を受ける恐れもあります。
対処法:会計ソフトの自動償却機能を利用すれば、月次で自動計上が可能になり、処理漏れを防げます。年度末には税理士にチェックを依頼し、償却漏れや過剰償却がないか確認することも欠かせません。また、少額資産や一括償却資産など、特例処理の対象となる資産についても社内ルールを定めておくとよいでしょう。

会計ソフトの設定ミスや運用ミス

消費税の設定を間違えて入力したり、口座の連携を誤って登録してしまうことで、帳簿の数字が実態と合わなくなることがあります。こうした初期設定のミスは後々まで影響を及ぼすため、軽視できません。特にクラウド会計ソフトでは、連携先が複数にまたがるため、同期エラーや重複登録のリスクも高まります。
対処法:勘定科目の設定や開始残高の入力ミス、自動連携の誤設定などは、後から修正が難しいため、導入時に専門家のサポートを受けて正確に設定することが大切です。年に一度は設定内容の見直しを行い、消費税区分や自動連携ルールが最新の業務内容に合っているかを確認します。操作マニュアルを社内で作成しておくと、担当者が変わってもスムーズに引き継ぐことができます。

売上の計上時期ミス

飲食店を経営するAさんは、12月31日に提供したサービスの代金を翌年1月に受け取ったため、翌年分の売上として計上してしまいました。この結果、当年度の所得が実際より少なく申告され、後に税務調査で指摘を受け、追徴課税と加算税で合計25万円の追加負担が発生しました。
対処法: 発生主義の原則を理解し、サービス提供日で売上を計上する。入金日ではなく請求書発行日を基準にする。

個人支出の混入のミス

個人事業主のBさんが、プライベートの食事代3万円を接待交際費として計上。税務調査で発覚し、否認された経費の税額に重加算税が加わり、追加で8万円の負担となりました。
対処法: 事業用とプライベート用の支出を明確に分離し、グレーゾーンは税理士に事前相談する。

売掛金の残高確認不足のミス

取引先からの入金漏れや請求書の未送付により、本来回収できるはずの売掛金が長期間放置され、結果的に貸倒れリスクが高まる。
対処法:売掛金台帳を作成し、月末には必ず銀行口座との照合を実施します。請求書には支払期日を明記し、期日の1週間前にリマインドメールを送付する習慣をつけることが重要です。また、3か月以上未回収の売掛金については個別に電話連絡を行い、回収スケジュールを確認しましょう。

在庫管理の不備によるミス

小売業のCさんは在庫数の数え間違いにより、実際より多く在庫計上してしまい、売上原価が過少となって所得が過大に。修正申告により追加の税負担が発生しました
対処法:月末の棚卸しは必ず2名以上で実施し、相互チェック体制を構築することが基本となります。商品にバーコードを付けて管理ソフトを活用すれば、人的ミスを大幅に削減できます。季節商品や期限のある商品は別途管理し、売れ残りリスクを早期に把握することも欠かせません。棚卸し結果は帳簿残高と照合し、差異がある場合は原因を必ず調査して改善につなげていきます。

最も大きなミス

外部専門家への相談を後回しにすること」です。独力で何とかしようとするあまり、手遅れになってから税理士や会計事務所に駆け込むケースは少なくありません。その結果、対応コストがかさみ、業績にも悪影響を与える可能性があります。特に確定申告の直前になって初めて相談する場合、対応できる範囲が限られてしまうこともあります。年間を通じた経理業務の流れを理解するには、経理は難しそうと感じる人が多く、特に初心者の方にはハードルが高いもの。しかし、年間スケジュールを把握し「何を・いつ・どうやるか」を理解すれば、日々の業務を整理しやすくなりますが参考になります。
対処法:月次または四半期ごとに相談日を定期的に設定し、不明点は都度メモして専門家と共有できるようにします。期末の前には「事前チェック会議」を設け、決算前に問題点を洗い出すことが望ましいでしょう。

経理初心者のための時間軸別業務管理

失敗を防ぐためには、まず「日々の記帳習慣」を身につけることが重要です。具体的には、以下のポイントを整理します。

毎日5分で継続する経理初心者の基本習慣

経理業務の基盤となるのは日々の継続です。レシートや領収書は受け取ったその日にファイリングし、紛失を防ぎます。会計ソフトへの売上や経費の入力も当日中に済ませることで、月末の作業負担を大幅に軽減できます。また、銀行口座残高を毎日確認することで、資金繰りの変化をリアルタイムで把握し、急な支払いにも対応できる体制を整えられます。

週1回30分の経理初心者の中間管理

週次では売掛金の入金状況を確認し、予定通り入金されているかをチェックします。同時に買掛金の支払予定も確認し、支払い漏れや遅延を防ぎます。経費精算についても週単位で処理することで、領収書の紛失や処理漏れのリスクを最小限に抑えることができます。

月末2時間の経理初心者

総括作業 月次では月次残高試算表を作成し、売上や経費の状況を数値で把握します。売掛金と買掛金の残高照合を行い、帳簿上の数字と実際の取引状況に相違がないか確認します。現金出納帳と実際の現金残高の照合も欠かせません。税務関連書類の整理も月次で行うことで、申告時期の慌ただしさを避けることができます。

四半期半日 経理初心者の戦略的準備

四半期ごとには消費税の計算と納付準備を行います。源泉所得税の納付についても確認し、期限内の納付を確実にします。また、決算に向けた資料の準備も四半期ごとに段階的に進めることで、決算期の作業を平準化し、ミスのリスクを大幅に削減できます。

実践的なポイント
・領収書やレシートはその日のうちに整理・保管し、会計ソフトにこまめに入力する
・紙の書類はスキャンしてクラウド上に保存するなど、デジタル管理の導入も有効
・会計ソフトの正しい導入と設定を行うことが必要
・税務や会計の基本知識を学ぶ姿勢
・初期の段階から外部のサポートを活用することも失敗防止

特に記帳代行や経理サポートを専門とするサービスを活用すれば、経理業務の属人化を防ぎ、業務の平準化と正確性を両立できます。コスト面が気になる場合でも、部分的なアウトソーシングから始めることで、無理のない導入が可能です。経理代行サービスの具体的な活用方法については経理業務の様々な悩みを解決し本業に集中できる環境を作るための経理代行サービスで詳しく解説しています。

財務諸表の基本的な読み方を理解することで経営判断の精度が向上します。数字が苦手でも安心できる、新入社員や初心者向けの会計・経理の基本解説もあわせてご確認ください。

経理体制を整えるためのステップ

経理体制を整えるための第一歩は、自社の経理業務を「見える化」することです。現在の業務フローを棚卸しし、誰が・いつ・何を・どう処理しているかを明確にしましょう。タスクの洗い出しを行い、それぞれの業務にかかる時間や難易度を可視化することで、改善の余地が見えてきます。

次に、経理業務のうち自社で対応すべき範囲と、外部に委託すべき範囲を切り分けることが重要です。例えば、日々の記帳や領収書の整理は社内で行い、決算書の作成や税務申告は専門家に依頼するという分業体制が現実的です。このように役割分担を明確にすることで、業務の効率と正確性が格段に向上します。

クラウド会計ソフトや経費精算アプリなど、デジタルツールを活用することで、記帳業務や帳票作成を効率化できます。特にスマートフォンでレシートを撮影するだけで経費登録が完了する機能など、初心者にも使いやすい機能が充実しています。また、専門家との連携体制を整え、定期的なレビューや相談ができる環境を構築することも、ミスの早期発見・是正につながります。

導入の際には、初期費用や月額コストだけでなく、長期的な運用コストやサポート内容も踏まえて判断することがポイントです。特に経理初心者にとっては、導入支援や操作説明が充実しているサービスを選ぶことで、移行期の不安を大幅に軽減できます。事前に無料トライアルを利用し、自社に合ったソフトやサービスを見極めることが成功の鍵です。

これらを踏まえたうえで、新たな税理士との契約を検討することで、長期的に信頼できるパートナーを見つけやすくなります。特に契約書にはサービス内容や料金体系を明記してもらい、後のトラブルを未然に防ぐことが重要です。

経理を「経営の武器」へと変えるために

経理業務は、単なる事務作業ではありません。数字の正確性は、資金繰りや価格設定、事業拡大の可否など、経営判断のすべてに直結します。そのため、経理初心者であっても、正しい知識と支援体制を持つことは、事業成功への近道と言えるのです。

「経理が苦手だから」と後回しにせず、まずは日々の処理を丁寧に行い、分からないことは専門家に相談する。その姿勢こそが、経理の失敗を防ぎ、経営をより強固にする第一歩です。特に創業期や成長期のタイミングでは、経理体制の整備が後々の発展に大きく影響します。

税理士法人YMG林会計では、無料相談も提供しております。税理士の切り替えに不安がある方も、まずはお気軽にご相談ください。あなたの経営を、より力強くサポートするパートナー選びの一助となれば幸いです。