決算期を前に確認すべき会計処理のポイント

経営コーチ

決算期が近づくと、こんな不安を抱える経営者の方が少なくありません。
「売上は伸びているのに、利益が残らない理由がわからない」、「経費の計上漏れや処理ミスがないか心配」
「税理士とのやりとりがギリギリで、資料の準備に追われている」、「今期の業績が読めず、設備投資や節税判断ができない」

こうした悩みの背景には、決算前に確認すべき会計処理のポイントを体系的に把握していないことが挙げられます。とくに小規模な企業や個人事業主では、経理担当が兼任であったり、専任がいなかったりすることも多く、属人的な処理に頼らざるを得ない状況があります。
この記事では、こうした状況に陥らないために、決算期を迎える前に押さえておくべき会計処理のチェックポイントを整理し、スムーズな決算対応と適切な経営判断を可能にする実践的なノウハウをご紹介します。

なぜ、決算前に「会計処理の確認」が必要なのか?

決算は単なる“締め作業”ではなく、経営を方向づけるための「最終評価プロセス」です。
この評価が間違っていれば、次年度の投資判断、金融機関への対応、節税策、果ては事業承継の準備にまで影響します。
にもかかわらず、「現金主義に近い処理をしている」「領収書を年末にまとめて処理している」「会計ソフトの入力が追いついていない」など、会計処理の精度が低いまま決算に突入してしまうケースが目立ちます。

これが原因で次のようなリスクが発生します。
・税務調査での指摘リスク
・意図しない納税負担の増加
・誤った経営判断(過剰投資・過小資金繰りなど)
・金融機関からの評価ダウン

こうした事態を防ぐためには、「決算前の事前チェック」こそが経営者のリスクマネジメントなのです。

会計処理が曖昧になる背景とは

日常の記帳がルーチン化・後回しになっている

経理作業は「やらなければならないこと」として認識されていても、どうしても日々の売上対応や現場業務が優先され、後回しにされがちです。特に、1人または少人数で経営している事業者にとっては、「時間が空いたらまとめて処理する」という姿勢が習慣化してしまい、記帳の遅れが慢性化します。
その結果、経費の支払日や売上の入金タイミングが曖昧になり、期ズレ(きずれ)=計上すべき期と異なるタイミングで処理してしまうミスが多発します。こうしたズレが積み重なると、決算書の正確性に大きな影響を及ぼします。

会計処理のルールや基準が曖昧

会計には、実は多くの“判断のルール”が存在します。たとえば「これは経費になるのか?」「交際費と福利厚生費、どちらに該当するのか?」「売掛金はいつのタイミングで計上するのか?」といった判断基準が、明文化されておらず、人によって処理が異なるケースが多く見られます。
このように処理基準が人によってブレていると、帳簿に一貫性がなくなり、決算時に数字の整合性が取れなくなる恐れがあります。特に担当者が入れ替わったり、外部委託との連携が不十分な場合、こうした「処理基準のばらつき」が表面化します。

曖昧な処理を税理士任せにしてしまっている

税理士に帳簿の確認や申告を依頼している場合でも、「資料を出せばあとはお任せ」という姿勢で関わってしまうと、会計数値への理解が深まりません。税理士側も限られた情報と時間で決算処理を行うため、細かな経費の判断や未収金の処理に手が回らず、結果として曖昧なまま処理されるケースもあります。
このような丸投げの姿勢では、数字が「過去の報告」にはなっても、「未来の判断材料」にはなりません。

会計ソフトを導入しても「使いこなせていない」

会計ソフトを導入すれば問題が解決すると思われがちですが、実際には「初期設定が間違っていた」「科目分類が自社の業態と合っていない」「自動連携が正確に機能していない」といった問題も多く見られます。
また、ソフトの便利機能(自動仕訳、帳票出力、グラフ分析など)を活用しきれず、「ただの帳簿入力ツール」として使っているだけのケースも散見されます。会計ソフトを“生きた経営ツール”として活用できていないことが、数字への理解不足につながっています。

人手不足と属人化が原因で「暗黙知」が多い

経理業務が特定のスタッフに集中しすぎている企業では、担当者の頭の中だけで処理ルールが完結してしまい、「あの処理は○○さんしか分からない」「マニュアルがないから確認に時間がかかる」という状態が慢性化しています。
こうした属人化は、退職・休職・異動の際に大きな業務停滞を招きます。また、数字の背景が共有されていないため、経営者が「なぜこの経費が多いのか」「この売上はいつ入るのか」といった意思決定に必要な情報をリアルタイムに把握できなくなります。

会計と経営判断が切り離されている

「会計は税金のため」「数字は専門家が見るもの」という認識が根強く残っている企業では、帳簿が“過去の記録”にとどまり、経営判断に活かす視点が育っていません。
本来、月次損益や資金繰り、固定費と変動費の比率、利益率の変動といったデータは、来期の戦略を練るための貴重な材料となります。会計情報を“経営のナビゲーション”とする視点がなければ、決算期の数字も単なる「報告資料」に終わってしまうのです。

経営判断に活かすための「決算前チェックリスト」

ここからは、実務レベルで「今すぐ確認すべき」会計処理ポイントを紹介します。以下は一般的な中小企業や個人事業主に共通する項目です。

売上・請求関係
・前受金、前渡金の処理が適切か
・未入金の売掛金がすべて記帳されているか
・請求漏れや売上計上タイミングのズレがないか

経費・支払関係
・経費の領収書はすべて収集・分類済みか
・仮払金の精算処理は完了しているか
・期末の未払費用(通信費、支払手数料など)の計上漏れがないか

資産・減価償却
・備品、車両などの取得資産を台帳に登録しているか
・減価償却の処理が適正か(※税理士に要確認)
・廃棄、売却した資産の除却処理は済んでいるか

在庫・棚卸資産
・在庫の実地棚卸が実施されているか
・棚卸評価の方法に誤りがないか(※税理士に要確認)

引当金・調整仕訳
・貸倒引当金や賞与引当金の計上が適切か(※税理士に要確認)
・決算整理仕訳が抜けていないか

これらの簡易的なチェックリストや税理士を活用しミスなしでスムーズに決算に取り掛かりましょう。

実務に落とし込むための5つのアクション

理論だけでなく、今すぐできる具体的なステップをご紹介します。
まず、今月中に以下を実行するだけでも、決算期に余裕が生まれます。

全取引の記帳を月次単位で見直す

まず取り組むべきは、月ごとに取引内容を明確に整理することです。

売上・経費・支払・入金を月別にまとめ、取引先や内容ごとに一覧化することで、「どの月に、どの取引があったのか」「未処理や未収はないか」が可視化されます。特に以下のポイントは重点的に確認しましょう。

  • 売上の請求と入金が一致しているか
  • 支払い済みの経費の記帳が漏れていないか
  • 月をまたぐ取引が正しく処理されているか

    月次ベースで見直すことで、決算直前になって慌てるリスクを回避できます。これにより、「数字が読める」状態をつくる第一歩になります。

証憑類(領収書・請求書・契約書)を「集約・整理」する

証憑書類は、税務調査時のエビデンスにもなる重要な資料です。紙・デジタルのいずれであっても、取引ごとに「日付・内容・金額・支払手段」がひと目で分かるように分類し、保存ルールを統一しておきましょう。
特に注意すべきなのは次の3点です。

  • 領収書の宛名と金額が明確か
  • 通帳やクレジット明細と記載が一致しているか
  • 取引の裏付けとなる契約書・納品書が揃っているか

保存方法についても、クラウドストレージや会計ソフトとの連携を活用することで、紙からの脱却・効率化が図れます。

クラウド会計ソフトの設定を見直す・導入する

もし既に会計ソフトを導入している場合は、設定が現状に合っているかを必ず確認しましょう。

  • 勘定科目の分類は正しいか
  • 消費税の課税区分は適切に設定されているか
  • 銀行・クレカの明細が自動連携されているか
  • 仕訳ルールの自動登録が機能しているか

設定が正しくないまま入力を続けると、帳簿のズレや税務申告のミスにつながる恐れがあります。
まだ導入していない場合は、freee、マネーフォワード、弥生会計オンラインなどのクラウド型会計ソフトの活用を検討しましょう。導入初期には学習コストもありますが、手間とミスの削減、リアルタイム管理が可能になるため、中長期的には業務の質を大きく変える投資となります。

税理士・専門家と「早期に」打ち合わせを行う

決算期が近づいてからではなく、2〜3ヶ月前から税理士と定期的にやりとりすることが理想です。
なぜなら、節税対策や決算整理仕訳などは、タイミングを逃すと手が打てなくなるからです。例えば、「中小企業投資促進税制」や「決算賞与による節税」などの活用は、期末前の判断が不可欠です(※詳細は税理士にご相談ください)。
また、会計処理上の判断についても、早めに相談しておけば資料準備にも余裕ができ、スムーズな決算対応が可能になります。
「とりあえず資料を渡す」ではなく、「現状を説明し、打ち手を相談する」姿勢が重要です。

会計ルール・業務フローを「社内に可視化」する

決算期に慌てる原因の一つが、業務が属人化していて社内共有ができていないことです。これを防ぐには、会計処理のルールをマニュアル化・チェックリスト化しておくことが効果的です。

  • 経費の判断基準(会議費/交際費/福利厚生費など)
  • 領収書の提出期限と保存方法
  • 記帳の締切日と入力手順
  • 外部との連絡フロー(税理士・顧問など)

こうした情報を、社内や関係者間で共有しておくことで、ミスの防止、引き継ぎの円滑化、業務の属人化解消につながります。とくに、経理を兼任しているスタッフがいる企業では、手順が明文化されていることが心理的な安心にもなります。

正しい決算は「事前準備」で決まる

決算対応において最も重要なのは、「決算日に間に合うように頑張ること」ではありません。正確な決算書をつくるには、日々の記帳と月次管理の積み重ねが何よりも重要です。

そして、決算前のチェックポイントを押さえ、必要な仕訳や資料準備を“前倒し”で完了させることで、慌てずに税理士との相談や経営判断に時間を割くことができます。

経営者が本来注力すべきは、「未来に向けた意思決定」であり、数字の辻褄合わせではありません。

決算期という節目を、単なる“義務”ではなく、“経営改善のチャンス”と捉える。そのための第一歩が、今回ご紹介した「会計処理の見直し」なのです。

専門家に相談して、今年こそ“正しい決算”を

「自社の会計処理が正しく行えているか不安」
「今期の納税額が読めない」
「来期の設備投資や節税を検討したい」

こうしたお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、無料の経営相談をご活用ください。

YMG林会計では、決算前の会計処理チェックから、税務申告、経営指標の読み解きまで、貴社の状況に応じたサポートをご提供しています。クラウド会計やオンライン対応にも精通しており、全国からのご相談が可能です。

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